板橋と執筆について

皆さんはじめまして。
板橋と京都を中心に建築家としての活動を行っています栁 圭祐と申します。

バスタ新宿から関西へ向かう昼バスの中で唐突に思い立ち、いたばしデザイン同好会のブログで記事を書いてみようと思いました。我ながらあまりにも唐突ではありましたが、基本的には自分の直感に付き合わされて動いていますのでいつも通りでもあります。記事を書かせて頂きたいという旨のご連絡をして少し時間が経った今現在、この記事は渋谷の名曲喫茶ライオンにて初の執筆をしています。お客もまばらで少し緩いエアコンの風が心地よく居座っています。いえ、初っ端から板橋ではなく失礼。

そもそも何故この場所でブログを書いてみようと思ったのかを初回の記事では簡単に書いてみたいと思います。

私は板橋区に住み始めて3年目になります。地元でもなければ、すごく板橋に住みたかったわけでもありません。自分たちが創作をする場所を探している中で本当に偶然にこの場所に辿り着いたのです。強いて言うならば、ここには「庭」があったからというぐらいでしょうか。
住んでみて段々と分かってきたのは、いわゆる雑誌なんかのメディアで取り上げられる23区の人気スポットにそもそも板橋区がないという不人気さだったり、住んでいる人たちも「板橋なんて〜」「板橋はただ住むための場所」という自虐が活発だということです。何らかの中央的なものとの距離を感じている雰囲気がぼやんと漂っていたのです。私はこれを面白いなと思いました。

僕は建築家という肩書きで活動し、そしてやま設計という事務所をしています。建築家という者は常に他所者の仕事でもあります。どこか別の場所からやってきて、そこの場所の面白さを発掘し、さらに何かしら良くなるために場所を作り上げていくお仕事です。良い場所を作るために、そして場所の可能性を発掘するために一歩引いた外側からの視点が大切になってくるのです。建築家という仕事は、実は建物を作ることだけが仕事ではありません。
そういう自分の仕事から考えてみると、住んでいる人たちがこの場所について退屈しているという状態はとっても面白いことです。実際にはいろんな人たちが自分たちの住む街を誇りに思っている部分も少なくないと思います。もちろん退屈なことばかりではないでしょう。でもしかし、この街にどこか退屈な部分があるのだとしたらそれはとっても未来が明るいことなのかもしれません。なぜならそれを面白くすることができるからです。

私の記事では、他の皆さんの記事のように面白いお店やイベントをご紹介するような有益な情報は得られないかもしれません。でも私なりにこの街をこうしたら面白くできるのではないか、あるいは自分が面白いと思う状態など、もう少しだけ先の方にある楽し気な空間について考え、それを書き記していきたいと思っています。

どれだけの方に読んで頂けるかは分からないけれども、ここでの執筆は自分なりに面白い場所や空間を作っていくための準備運動(=フィクション)とも捉えています。文章の形式はばらけるかもしれません。次回はエッセイかもしれないし、小説かもしれません。どれも嘘ではないと思います。ただ、少しだけ先走っていることが書かれているかもしれません。ほとんど妄想のようなものなのかもしれませんが、書き起こすことでこの先に立ち上がる空間の輪郭線がちらっと見えてくるのではないかと思っています。人間は何かを作るということでしか生きていけないと思っています。皆さん大いに作っていこうではありませんか。執筆という形式によって空間を立ち上げる。板橋に軸足を置いた、そんな私の創作活動の一端をお見せできればと思います。どうぞよろしくお願いします。

やま設計
〒175-0083 東京都板橋区徳丸1-36-4
https://www.yamasekkei.com/

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